SSudo's Lab

須藤爽のブログです。専門は(英語)教育政策,教育経営。

CELES2023(6月25日) で発表しました

中部地区英語教育学会 (CELES2023) で発表させていただきました(2023年6月25日)。

本発表を聞いた方の中で、何かご意見・ご感想のある方は、ぜひご連絡いただけますと幸いです (so.sudo1998@gmail.com)。また、発表スライドの送付希望があれば喜んでお送りしますので、ぜひご連絡ください。

Work in Progress セッションということで、現在構想中の研究テーマについて発表し、貴重なご意見をたくさんいただきました。Work in Progress セッションは本学会では今年が初めての実施とのことですが、参加させていただいた身としては、途中段階の研究発表が行えるということでとても気軽に参加することができました。加えて、実際に分析を行う前に、リサーチデザインや分析の見通しについての貴重なご意見がいただけるので、今回の発表を通じてかなり研究が前進したと実感しています。ぜひ来年以降も継続していただきたい取り組みだと思います。ありがとうございました。

今回の発表を通じて、あらためて事例研究における「事例」選択の重要性を痛感しました。リサーチデザインではその点がまだまだアマアマだったので、いただいたご助言をもとに洗練させていきます。また、教育政策・教育経営学の知見を取り入れることに注力した結果、本来の強みであるはずの英語教育のドメイン知識に関する検討が不足していた印象なので、その点も今後の検討課題としたいと思います。

以下、記録として発表タイトルと発表要旨を載せておきます。

発表タイトル

中等英語教育を対象とした教育課程経営論の検討 (Work in Progress セッション)

発表要旨(一部加筆修正)

教育の質向上・維持を達成するために、国家は教育政策を通じてある種の統制を行う。その最たる例が学習指導要領であろう。各教科の指導内容や教育課程のありようは少なからず学習指導要領に規定されている。2017, 2018年の学習指導要領改訂により、例えば中学校英語科では授業を英語で行うことが基本とされ、高等学校英語科では発信力を高めるための科目として「論理・表現・Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ」が新設された。このような国家による制度的統制は学習指導要領に限定されず、入試もまたそれに含まれる。入試は選抜機能としての側面だけでなく、昨今の大学入試改革(例:英語民間試験活用、大学入学共通テストへの情報Ⅰの導入)が象徴するように、教育現場における授業改善を目的とした教育改革の一手段として用いられている(荒井, 2020)。ここで問題となるのが、このような国による統制が実際にどの程度の拘束力・影響力を教育現場に与えるかという点だ。複数の先行研究(ex. 金子, 1995)で指摘されているように、国による教育政策は教育現場に直線的に影響を与えるのではなく、県・地方・学校・教員といったアクターあるいは社会的関心・イデオロギーを説明変数として、屈折していく可能性がある。つまり、教育実践の改善を目的とした教育政策を検討する際は、国によるマクロな教育政策のみに注目するのではなくその実施過程にも目を向け、政策を駆動させる社会的要因・構造的要因・組織的要因を検討する必要がある。しかし、筆者が専門とする英語教育政策に関して言えば、上記のような実施過程に配慮した政策形成はほとんど為されていないのみならず、このような関心に基づいた研究蓄積もかなり心許ないと言える。以上の問題関心をもとに、博士論文執筆に向けた調査では、英語教育政策の分析に加え、高校を対象としたエスノグラフィー調査を行い、現場で起きていることを明らかにすることを目指す。本発表ではその研究手法について現時点における構想を報告する。